離婚するまでの私は、後悔ばかりの毎日だった。些細な事でも、嫌なことがあるとすぐに落ち込み、グズグズクヨクヨ。いつまでも嫌な気分を引きずって、ああすれば良かった、こうすればよかったと、後悔しない日は一日もないといってもいい程だった。
そんなナサケナイ私が、「こうして良かった!」と言える事が一つだけあるのだ。それは、「離婚した」ということだ。離婚してからの私は、あんなに悩んでいたことはいったい何だったのだろう?というくらい元気になった。離婚した時私は、二十年近くに及ぶ長いストレスから解放された。ある友人は、「懲役刑が終わって良かったねえ」と表現した。身体にまとわりついていた濃い霧がスッーと晴れ、久しぶりにシャバの空気を吸う囚人の気分を味わった。
ここまで離婚したことを手放しで喜ぶなんて、信じてもらえないかもしれない。それほど、以前の結婚生活が私にとって、重い重い足かせとなっていたのである。
現実問題として、「離婚する」ということは、想像するよりもずっと大変なことだ。お金や子供の問題、難しい法律、書類、いろんな手続き…。そして何よりも、前夫と何度も話し合いをしなければならないという状況が、精神疲労の原因となり、離婚を困難にしてゆくのである。
「実は私も離婚がしたい」と言う友人たちは以外に多い。しかしその言葉とは裏腹に、友人たちの態度は冷たくなった。理想と現実は違うのよ、とばかりに何度も白い目を向けられた。実の母でさえ、自分の離婚はタナに上げ、知らん顔を通されたままである。
結局、夫婦の問題は夫婦にしかわからない他人事、ということである。二十年近くの長い間、前夫が苦痛を与え続けてきたのは私だけ。それがどんな苦痛だったかなんてうわべだけしか見れない他人にわかるはずがないのである。
離婚するということは、運命を、そして人生を変えることだ。運命も人生も、そんなに容易く変わらない。だけど、どうしてもそうしたいと強く願い、勇気を出せば、変えられるものなのである。
強く願えば、きっと何かが変わる。
離婚しようと決めた時、前夫の浮気が発覚し、幸運の風が私に吹いた。「これ以上我慢する必要ないで」と言ってくれた、高三の息子の言葉も、私に大きな勇気を与えてくれた。
離婚届けを出した年の暮れ、私は今の夫に出会った。誰かから、勇気を出して頑張った御褒美を貰ったような気がした。
離婚が、私のすべてを変えてくれたのだ。それから私は、グズグズクヨクヨ悩んだりしなくなった。後悔ばかりの毎日にもう二度と戻りたくないと思うのだ。
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